中国巨大フィンテックのアント・グループ(Ant Group)が計画していたIPO(新規株式公開)に待ったがかかった。突然の計画取り止めは、中国政府が抱えるアントの同国経済に対する負の影響への脅威が背景にあると、各国報道機関は報じた。

同時に習近平国家主席のお墨付き国家プロジェクトであるデジタル人民元(中央銀行デジタル通貨)構想は、アントを含む民間企業をけん制する手段の一つと言える。

デジタル決済業界の関係者らは、政府はアリペイ(Alipay)とウィーチャット・ペイ(WeChat Pay)の成長を抑えるための取り組みの一つとして、中国人民銀行主導のデジタル人民元を活用しているとの見方を述べる。

デジタル人民元はアリペイのマイクロ融資事業の成長を阻み、銀行口座を持たない人たちに金融サービスを提供する一方で、商業銀行に預金を引き戻す可能性がある。

フィンテック・シンクタンク「ポリシー4.0(Policy 4.0)」のタンヴィ・ラトナ(Tanvi Ratna)CEOは、アントのIPOはデジタル決済業界の亀裂を露呈させていると話す。中国人民銀行はデジタル人民元を発行して、第三者による決済プラットフォームを抑える力を自らに与えようとしていると言う。

ポリシー4.0は現在、デジタル人民元に関する調査レポートの作成を進めており、11月18日に発表する予定だ。

アントのマイクロ融資事業をけん制

上海証券取引所と香港証券取引所は先週、中国の金融規制当局がアントのマイクロ融資事業に対して懸念を表明したことを受け、史上最大と言われたアントの350億ドル(約3兆7000億円)の両取引所でのIPOを中止した。

アントのマイクロ融資事業は、借入による資金調達の比率が大きい中国経済にさらなる負債をもたらす可能性があるという。

アントのマイクロ融資事業を牽引するサービスが「ファーベイ(花唄:Huabei)」と「ジエベイ(借唄:Jiebei)」だ。ファーベイはアリペイに搭載されたバーチャル・クレジットカードで、商業銀行と借り手の間の融資を円滑化する。ジャーベイは短期の消費者ローンだ。

中国人民銀行がアリペイの融資事業をコントロールする1つの方法は、同社が融資を行う際には現金ではなく、デジタル人民元で行うよう義務づけることだ。

「融資にデジタル人民元を使わせることで、中国人民銀行はアリペイの利益を抑えることができる。これが政府が強制したいことかもしれない」とラトナ氏は述べる。

アントのIPOの前日、中国の金融規制当局はオンライン融資事業者に、融資の少なくとも30%を銀行と共同で提供することを求める新たな規制案を発表、アントにとっては融資事業のハードルが上がることになる。

中国の債務問題とフィンテック規制

アントの好調な融資事業は、中国政府が国内で急増する債務問題や弱体化する銀行への対策に取り組むなか、金融規制当局の神経を逆なでした。中国経済に対して強まる大手フィンテック企業の影響力を抑えるために、政府は11月11日、フィンテック企業に対する新たな独占禁止規則の草案を発表した。

「中国は国内の債務問題を非常に意識している。多くの企業は、特に新型コロナウイルス感染拡大後、キャッシュフローが不足している。アントは個人ローンに力を入れているが、その多くは焦げ付く可能性がある」

アリペイはこれまで、銀行に融資データを提供することに積極的ではなかった。ファーベイやジエベイは2018年1月にスタートしたが、今年7月末に中国人民銀行の要請があるまで、データを同行に提供していなかった。

銀行はデジタル人民元を使うことで、焦げ付きの可能性がある資産を追跡・分析することが簡単になる。デジタル人民元は金融における透明性と効率性を高めることができるとラトナ氏は説明する。

「中国人民銀行にとって、原資産がデジタル人民元になることはきわめて重要なこと。中国人民銀行は、シャドーバンキング、ローンの焦げ付き、違法の可能性が高い資金調達をはじめ、金融システムにおける多くの慢性的な問題を解決することができるようになる」

商業銀行からの預金流出

中国の決済大手はまた、別の脅威も生み出している。中国の商業銀行から、非銀行系の決済プラットフォームに預金が流出している。中国のモバイルバンキング市場では、2019年10月〜12月に約8兆ドル(約840兆円)の取引が行われ、アリペイが55%、ウィーチャット・ペイが39%を占めた。

アリペイは世界最大級のMMF(公社債投信)「ユアバオ(余額宝:Yu’e Bao」を持っている。商業銀行の預金口座よりも高い利回りを提供するために、多くの場合、国債などの安全資産に投資する投資信託の一種で、アリペイユーザーの多くはユアバオに投資している。他にも同様のファンドを抱えるアリペイの総資産は6月時点で約6000億ドル(約63兆円)に達した。

「預貸率(LDR:融資と預金の比率)は、商業銀行がどれだけの融資を実行できるかを左右する。預金が多いほど、銀行は多くの融資を行うことができる。融資は最も収益性の高い事業の1つだ」と暗号資産企業のZBグループ(ZB Group)に勤務するオーロラ・ウォン(Aurora Wong)氏は述べる。

中国の商業銀行は、特に経済の低迷が深まる時には、融資に合わせて、預金量を維持、あるいは増やしていく必要がある。

銀行に有利なデジタル人民元

中国の商業銀行の一部は、小口預金者が決済取引でデジタル人民元を使用することを望んでいる。預金者がデジタル人民元を法定通貨に交換した時に、現金はモバイル決済アプリではなく、銀行口座に留まることになるからだ。

デジタル人民元の一般への普及を促進するために、中国人民銀行は10月、抽選で選ばれた5万人の深セン市民を対象に一人200人民元(約3100円)、総額150万ドル(約1億6000万円)のデジタル人民元を配布した。深セン市の3000以上の店舗には支払いに対応するためのQRコードが貼り出された。

デジタル人民元が中国の商業銀行にもたらすメリットは、預金の増加にとどまらない。多くの顧客を抱える銀行は多くの取引データを持っており、消費者の分析やオンラインでの行動分析を行い、さまざまな方法を試すことで、データをマネタイズすることができる。

「中国の商業銀行は、ますますフィンテック企業に似てきている。デジタル人民元の無料配布はこれが最後とは思えないし、消費者に商業銀行のウォレットを使わせるための施策はさらに行われるだろう」とウォン氏。

デジタル人民元の普及の障害

それでもまだ、アリペイとウィーチャット・ペイはデジタル人民元の一般への普及の障害となっている。10月に行われた深セン市での無料配布の時も、一部の買い物客は、その便利さからアリペイやウィーチャット・ペイを利用した。

「普及の問題は、中央銀行にとって難しい問題だ。スタートアップにとっては当たり前のことだが、中央銀行にとっては未経験のことだ」とポリシー4.0のラトナ氏は言う。

デジタル人民元の一般への普及を促す最も可能性の高い方法は、デジタル人民元に対する好意的な規制政策を講じて、銀行口座を持たない人たちが基本的な金融サービスを使えるユニークな技術的特徴を作り、専用デジタルウォレットのUX(ユーザーエクスペリエンス)を改善させることだろう。

銀行口座は不要

決済の点でアリペイとの差別化を実現するデジタル人民元の技術的特徴は、銀行口座は不要という点だ。

グローバル・フィンデックス(Global FIndex)の2017年のレポートによると、中国には銀行口座を持たない人が2億2500万人以上存在する。これは世界でも最大級の規模となる。

デジタル人民元の口座は、保有・使用したいデジタル人民元に応じたスライド制のKYC(顧客確認)要件を備えていると、ブロックチェーンインフラ企業、プラットオン(PlatOn)のチュアンウェイ・ゾウ(Chuanwei Zou)氏は述べる。

「デジタル人民元ウォレットに多くの個人情報を登録するほど、ウォレットに多くのデジタル人民元を保有することができるようになる」

アリペイとウィーチャット・ペイでは、ユーザーは銀行口座を登録する必要があり、それには政府発行のIDが必要だ。さらに身元確認のために、顔認証と携帯電話番号も必要になる。

デジタル人民元ウォレットに数千ドル(数十万円)しか保有しないユーザーは、完全に匿名を保つこともでき、中国の多くの小口預金者にとってメリットとなるだろうとゾウ氏は語った。

デジタル決済の市場構造を変える

銀行口座からのデカップリング(切り離し)はまた、中国国内の外国人や国外で人民元を利用した取引を望む人にも有用だ。

中国人民銀行は2022年、北京冬季五輪の期間中にデジタル人民元のテスト運用を行う予定だ。外国人は現金を持ち歩いたり、銀行口座を開設することなく、他国の法定通貨を直接、デジタル人民元に交換できるようになる。

デジタル人民元を使うことで、外国人も中国国内でモノやサービスを購入することができ、中国国外から誰でも国境を超えて資金を送金できるようになる。銀行口座を使わなくても、デジタル人民元は中国人民銀行が管理するクローズドシステムの一部になるとゾウ氏は説明する。

「デジタル人民元は間違いなく、一般への普及という点でデジタル決済の市場構造を変えるだろう。我々にはすでに商業銀行のモバイルアプリ、アリペイやウィーチャット・ぺイがあり、デジタル人民元のネイティブアプリも登場するだろう。それは第三者の決済アプリにも統合できる独立型アプリとなる可能性がある」

中国の4大商業銀行は自行のモバイルアプリにデジタル人民元の口座を含めている。その一方で、中国人民銀行はアリペイやウィーチャット・ペイにデジタル人民元を決済の選択肢として統合することを許可していない。

他の多くの大きな政策変更と同じように、中国政府はデジタル人民元にトライアル・アンド・エラーで取り組んでいるとラトナ氏は語った。

「中国人民銀行はまだ、手持ちのカードをすべて使い切ってはいない」

参考資料:https://www.coindeskjapan.com/87836/ 

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