1925年の創業から100年を迎えようとしている野村ホールディングス(HD)。業績の悪化と企業統治の不信を払拭しようとする一方、野村は金融界に押し寄せる新たなテクノロジーの大波をとらえながら、金融機関としての再定義を進める。

今年4月、永井浩二グループCEO(最高経営責任者)の直轄部署として未来共創カンパニーが組織された。司るのは野村の広報部を8年間にわたり率いてきた池田肇・執行役員。

お金とは何か、金融とは何かを議論することが起きている。世界の金融界は大きな転換点を迎えた。これから、野村は何ができるのか?野村が持つものとは何かを棚卸しする必要がある。それが未来共創カンパニーのミッションだ。池田氏がインタビューで語った。

未来の野村を形作る時、約8100万人のアクティブユーザーを抱える国内プラットフォーマーのLINEとの協業と、暗号資産・ブロックチェーン領域における取り組みは重要な一部分になるだろう。

LINE証券は野村が49%、LINE Financialが51%を出資して設立された。国内企業100社の株式を、1株150円から平均3000円で購入できるサービスを今秋から始める。

LINE証券は日本のロビンフッドになるか

メッセージアプリでプラットフォーマーの地位を確立してきたLINEは、金融、eコマース、エンターテインメント、コンテンツ、モバイル送金・決済の分野でもプラットフォームを作り上げようとする戦略を進めている。

金融事業では、アジア最大の決済・銀行プラットフォームを目指すLINEだが、その戦略はシンプルだ。LINEウォレットを起点として、お金の流れをシームレスにしていくこと。LINE証券もLINEが描く未来のマネーフローの一部分を形成していくことになる。

一方、約113兆円の預かり資産、約533万口座を有する野村には、オンライン証券事業で苦い経験がある。過去20年の間、野村ファンドネット証券とジョインベスト証券の名の下でオンライン証券事業を試みたが、いずれも失敗に終わった。

「今まで野村が100年間やってきた世界とは違う世界があるかもしれない。100年やってきて次に残す良さは、LINE証券で一緒にやっていけば良いし、我々がやってきて気づかないお客様のニーズもあるだろうし、大きな気づきは生まれる」と池田氏は言う。

「次の100年の話をしても仕方ないのかもしれない。しかし、根幹にあるものは、変わらないと思っている」(池田氏)

アメリカではすでに、デジタルネイティブの若い世代をターゲットに、手数料ゼロの株取引アプリでミレニアル世代(1980年から2000年頃に生まれた世代)を魅了する企業が注目を集めている。カリフォルニア・メンローパークに拠点を置くスタートアップのロビンフッド(Robinhood)だ。

手数料ゼロに加え、株取引を“SNSに投稿するくらい”シンプルなUI・UXを作り上げたことがロビンフッドの飛躍の要因だと言われている。ロビンフッドは7月に350億円規模の大型の資金調達を行い、その企業価値は50億ドル超から76億ドル(約8300億円)に増加した。その価値はLINEの時価総額約8400億円にほぼ等しい。野村HDの時価総額は現在、約1.3兆円だ。

日本では、「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」と試算した金融庁のワーキンググループの報告書が、世代に関係なく、未来の資金をどう確保すれば良いのかという不安を煽った。生活コストを削るための地方都市への移住や、分散型・長期型の株式投資の必要性を改めて若い世代に訴える専門家の意見が、メディアで多く伝えられた。

「手軽に、投資経験のない方にも知識を身につけて頂き、ワクワクするものを感じてもらえるのがLINE証券だと思っている」と池田氏。「僕も何度かLINEの方とは4月以降に会っているが、同じ船に乗っていくわけだから、新たな価値を新たなお客様に提供するというチャレンジをしていきたい」

ブロックチェーンとコマイヌ

野村はブロックチェーンなどのテクノロジーに対する取り組みを強化しながら、投資を加速している。

「お客様の利便性を向上させるのに必要な技術とは何かを考えている。ブロックチェーンに関して言えば、その技術がどこまで使えるのかはこれからの話だが、お客様に必要な技術であれば、きちっと取得しないといけないだろうし、活用しなければいけないと思っている」と池田氏は語気を強める。

野村は野村総合研究所(NRI)と2015年から、有価証券の情報管理にブロックチェーンを利用するための検証を続けてきたが、いよいよ開発フェーズに移ってきた。2020年夏には、社債を対象に取引をブロックチェーンで管理する取り組みをスタートさせる。

ブロックチェーンを活用すれば、社債の発行条件や取引履歴などを低いコストで記録できる。

暗号資産領域で注視される野村のもう一つの取り組みが、「Komainu(コマイヌ)」と名づけられたプロジェクトだ。

昨年5月、野村は暗号資産のハードウォレットではその業界を牽引するフランスのLedgerと、イギリスのグローバル・アドバイザーズと共にKomainuを始めると発表した。デジタル化された資産の管理(カストディ)サービスの研究開発だ。

新たなアセットクラスと機関投資家

新たなアセットクラスとしての暗号資産への投資機会や、トレーディング機会を模索する機関投資家は、海外を中心に増加傾向にある。それに応じて、デジタル化・暗号化された資産を安全に管理するニーズは強まっている。

「コマイヌを始めて以来、150以上の機関投資家から連絡を受けている。カストディの面で、機関投資家が直面する課題をなんとか解決していきたい」と、池田氏と共に未来共創カンパニーに在籍する執行役員、八木忠三郎氏は言う。

野村HD執行役員・八木忠三郎氏。

加速させる投資活動では、野村はブロックチェーンを基盤とするオンライン決済システムを手がけるOmiseホールディングスに出資を行なったばかりだ。

Omiseホールディングスはタイ・バンコクに拠点を置き、決済サービスやイーサリアムを基盤とするブロックチェーンの「OmiseGO」や、法定通貨やデジタル資産の交換プラットフォーム「Go.exchange」を開発している。

また、イーサリアムのスマートコントラクトの脆弱性を見つけるセキュリティ監査のQuantstampにも投資してきた。本田圭佑氏が運営するファンド「KSK Angel」が出資したことで話題になった企業だ。

ブロックチェーンが金融界で広く使われるようになれば、不動産や株式などの取引内容を安全で速く処理するスマートコントラクトが重要な役割を果たす。その際、監査によるセキュリティー保証はさらにその重要度を増す。

1月、野村は前途多難な2019年がスタートさせた。2018年4月〜12月期決算が1000億円を上回る最終赤字となったと発表した。2008年の世界金融危機以来の大きさだ。

5月には、東京証券取引所の上場基準の見直しに関連した情報漏えいがあったとする社内調査の結果を明らかにした。

国内最大の証券会社を揺るがす令和元年の上半期だった。その一方で、野村が描き始めた未来の野村の姿を垣間見られた6カ月でもある。しかし、JPモルガン・チェースを筆頭に米金融大手が、テクノロジーを駆使した新たな金融サービスの開発を急ピッチで進めれば、大手テクノロジー企業やフィンテック・ベンチャーは次から次へと金融への参入を続けている。

池田氏はこう話す。

「次の100年の話をしても仕方ないのかもしれない。しかし、根幹にあるものは、変わらないと思っている。世の中の資本市場、お金の循環のようなものをきちっとサポートしていき、その循環を促していくというのが野村の役割ではないだろうか。お客様と対面における人(社員)の価値と技術を融合させて、一体となったサービスを作ることでお客様の満足度を高めていくのだろうと思う」 


参考資料:https://www.coindeskjapan.com/12897/ 


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